消える前に……


「帰ろうか!!」


そう言って俺たちは

昇降口から外に出た。


「寒ぃな〜。」


みんなが口をそろえて言った。


冬の風の冷たさが、

体にしみてきた。





「最後の最後まで。」


職員室で、

井上先生が呟いた。


「最後の最後まで、
鈴木にはいろんなこと
教えられっぱなしだな。
どっちが教師だかわかんないな……。」


そう言って、

井上先生は小さく笑った。


「本当にお礼を言わなきゃいけないのは、
私の方だったのにな。」




井上先生が一人で

つぶやいた言葉なんか、

俺は全然知らないままだった。



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