消える前に……
「修君が決めたことなのに、
わがままだよね。
だけど私の手を離さないで……
私を放さないで……。
私…嫌だよ………。」
綾の小さく、
弱い声が俺の耳に届く。
俺の心を締め付ける力は
どんどん強くなっていく。
もう、
押しつぶされてしまいそうなくらいに
強くなっていた。
だけど、
その気持ちを隠して
俺は言った。
「俺、小説家になりたいって
話しただろ?
だからいろんなもの見て、
いろんなこと知りたいんだ。」
「私も行く!!」
綾が俺の胸に
顔をうずめて言った。
悔しい…。
本当に悔しかった…。
抱きしめてあげたかった……。