消える前に……
「俺もう綾のこと
好きじゃないから。」
俺はそう言って
綾に背を向けた。
冷たいやつに見えただろう。
でも、
それで良いんだ。
俺の目からも、
大粒の涙がこぼれ出した。
「ばかっ!!」
後ろで、
力なく言う綾の声が
聞こえる。
「修君の、ばか!!」
何度もそう言って
俺の背中を叩いている。
小さな力で叩く綾が
すごく愛しかった。
振り向きたかった。
でも、
俺は何もすることもできずに、
前を向いたまま
立ち尽くしていた。