消える前に……


駅までの道が

行きの何倍にも何十倍にも

長く感じられた。


逃げだしたいくらいだった。


綾が傷つくことだって

わかっていたし、

全部覚悟したつもりだった。


俺を嫌いになってくれれば

良いって思ってた。


だけど、

やっぱり

嫌いになってほしくないって

思う自分がいたのも

確かだった。


傷つく綾に

何もしてやれない

俺が辛くて、

悔しくて、

俺の頬を涙が伝う。


綾にはもう、

絶対に

見せることのできない

俺の正直な表情。


俺は一度も振り向くことなく、

駅に向かって

歩いて行った。



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