消える前に……
綾の声は震えていた。
小さな綾の声は、
周りの足音に踏みつぶされ
簡単に消えていった。
「送るって言ったから。」
俺は綾に返事をした。
「……。」
綾は何も言わずに、
俺の後ろにやってきた。
「ここからは自分で帰るから。」
そう言って、
すごく弱い力でだけど、
一生懸命
俺の背中を押していた。
「良いよ。
もう遅いんだし…」
「……しないでよ!!」
綾の声は
俺の耳まで届かなかった。
「え?」