消える前に……


俺は後ろを

振り向いてしまった。


綾は制服の袖で

涙を拭いながら、

もう一度言った。


「…優しくしないでよ……。」


その言葉は

今まで以上に

俺の胸を締め付けた。


心臓をつぶすかのように強く、

心を壊すほどに大きく……。


俺の目にもまた、

涙がたまり始めた。


「ごめんな…綾。」


涙のたまった俺の表情を

見せないように、

俺は電車のほうを向いた。


「じゃぁな……。」


俺は小さく言って、

電車に乗った。



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