消える前に……


「じゃぁ一回だけ。
一回だけ謝らせて下さい。」


「わかった。
もう、そんなに自分を悪く思わないって
約束してくれるなら。」


「本当にごめんなさい……。」


俺は深く頭を下げた。


「顔をあげて?」


その言葉で俺は顔をあげ、

前を向いた。


「私からはお礼を言うわ。
修君、本当にありがとう。」


そう言って、

綾の母親は笑顔を向けてくれた。


「あの、お願いがあるんですけど。」


俺はそう言って、

ポケットの中から

写真と手紙の入った封筒を

取り出した。


「5年後……。
5年後もし綾が進めていなかったら、
これを渡してあげてください。」


そう言って、

俺は手紙を差し出した。



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