消える前に……
◇桜の花
「お母さん。
あたし行ってくるね。」
玄関の所から、
そういう声が
聞こえてきた。
「いってらっしゃい。
気をつけてね。」
「じゃぁ、行ってきます!!」
そう言って、
玄関の扉を開けて、
出て行った。
明るい朝日が
町を照らし、
外では挨拶する声が
聞こえてくる。
鳥の鳴き声や、
車の音も
静かに聞こえる。
綾の母親は、
古い封筒を持って、
ソファに座っていた。