消える前に……
「だめ!!
家に帰ってから読んで?」
そう言いながら綾は
本を開こうとする俺の手を
両手で押さえてきた。
「う……うん。
わかった」
俺の心臓はすごいドキドキしていた。
ただ綾の手が俺の手に触れただけなのに。
今までにだって
女子と手をつなぐことぐらい何度もあったが、
こんなにドキドキしたことは一度もなかった。
すぐに綾が気づき、
手を引っ込めた。
「ごめん。
学校で泣いちゃ困るからさ!」
綾の頬が少し赤らんでいた。
「そんなに感動するんだ。
読むのがすごい楽しみになってきた!」
俺は、そう言って
本をかばんの中にしまった。
授業中も放課も
俺と綾はずっと話していた。
綾とは、
本当に気があって
すごい楽しいな。
あっという間に、
一日は過ぎて行った。