消える前に……



その時、

昔の光景を思い出した。


あれは確か……

まだ俺が小さかった頃。


俺が近所の子と喧嘩して倒れてた時に、

朋樹が手をさしのばしてくれたんだ。


俺はその手を借りて、

起き上がったんだ。


そしたら、

朋樹が俺を見て、

満面の笑みで言ってきたんだ。


「俺、朋樹!菊池朋樹!」


そうだ……。


朋樹は俺にいつも笑顔を向けてくるんだ。


俺が、

倒れた時とかへこんだ時は

いつも手をさしのばしてくるんだ。


初めて会った日からそうだ。


「修?」


朋樹のその声で俺は、

現実に引き戻される。


俺は、朋樹の手を掴んだ。



そしたら朋樹はあの時と同じように、

満面の笑みで俺の手を引っ張った。



「心配すんな!俺はここにいる。」


朋樹の言葉が

俺の心を暖かくしてくれる。



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