消える前に……



心臓が高鳴り、

声が出なくなってきた。


「じゃぁ、今から会えない?」


俺は、

そう言った。


綾の声がすごく真剣だったから、

その話を直接聞きたかった。


それに、

俺も綾に言いたいことがあったから。



『綾のことが好きだ』



それが言いたくて

言いたくてしょうがなかった。


今の気持は、

今しかないから。


まったく同じ気持ちなんて

これから何十年生きたって、

二度と巡り合えないから。


それに、

特に俺の場合は……


いずれ綾のことが好きだったことも

忘れてしまうかもしれない。


こんなに……


こんなに強く思ってることですら

忘れてしまうかもしれない。


だから、

今言いたいことは

言っておかなかったら一生後悔する。


そう思ったら、

俺の体は動きだしていた。




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