アメット
「これから、いかが致しますか?」
「パーティーは、これ以上参加はしない。だからといって、逃げ出すことはしない。暫く……寝る」
「わかりました。では皆に、シオン様が寝ている間、この部屋に誰も入室しないように言っておきます」
「そうしてくれると、有難い」
「では――」
それだけを言い残すと、アムルは踵を返し退室する。
シオンはアムルの退室を確認すると、ちょうどいい温度まで冷めたコーヒーを一気に飲み干し一息付く。
そしてベッドに倒れるように横たわると、日頃の忙殺ともいえる仕事の影響で疲れきった身体を休ませることにした。
普段使用している格安で購入したベッドと段違いで、シーツや毛布の肌触りがいい。
流石高級な物を使用しているだけあって、すぐに瞼が重くなってくる。
シオンは半分眠りながら胸元を緩めると、そのまま一気に眠りの底に落ちる。
そして、最高の眠りを楽しむのだった。
一体、どれくらい眠ったのか――
シオンはまどろみの中、周囲に視線を走らせ時刻を確認する。
しかしいつもと違い、時刻が確認できる物が見付からない。
自分は、何処にいるのか――
まだ完全に目覚めていない思考を動かし考えていくと、パーティーに参加する為に統治者の一族として戻って来たことを思い出す。
(ああ、そうか)
何度か欠伸を繰り返しながら身体を起こすと、携帯電話で時刻を確認する。
現在の時刻は、午後14時。
相当長い時間寝てしまったのだと苦笑するが、お陰で日頃の疲れを取ることができた。
その反面身体が鉛のように重く、大きく伸びをした後、ベッドから下りることにした。
(喉、渇いた)
アムルが用意してくれたコーヒーカップを眺めるが、眠る前に一気に飲み干しているので残っていない。
それなら何か飲み物を貰いに行けばいいと、シオンは再度欠伸を繰り返しながら廊下に出る。
すると、何と偶然なことか――仕事をしている侍女と偶然出会ってしまう。
突然の出来事に、互いに間の抜けた声音を出してしまう。
しかし、瞬時に自分が失礼な発言をしてしまったことに気付いた侍女が、慌てて頭を垂れ無礼なことをしてしまったことを詫びる。
勿論、それについてシオンが咎めることはせず、それどころか目撃したことを内緒にして欲しいと頼む。