アメット
しかし望んだところで、アイザックに会えるわけではない。
互いにB階級の人間同士で付き合っているが、シオンは統治者一族の人間。
いつかアイザックだけには自身の正体を話さないといけないのだが、なかなかいいタイミングが掴めないのが現状。
それに、信じてくれるかどうか怪しい。
だが――
いつか。
あいつと本当の友に――
本音で語り合えれば、どれほどスッキリするだろうか。
統治者の一族として不自由ない生活を望めるが、だからといって満たされない気分がいっぱいで、心の中に空洞が生まれる。
シオンは盛大な溜息を付いた後、自室へ戻っていくと侍女がアイスコーヒーを持ってくるのを待った。
◇◆◇◆◇◆
その夜、シオンは父親と一緒に食事を取っていた。
語られるのは今回行われていたパーティーについてで、予想上に長く会場にいたことにグレイは息子を評価する。
だが、好き好んで長く会場にいたわけではなく、複数の女に付き纏われ離してくれなかったのが主な原因。
相変わらず同じことが繰り返される現状に嫌気を差しているのだろう、シオンの表情は優れない。
息子の表情にグレイは苦笑すると、この光景が昔から変わっていないと語る。
その話にシオンは父親の若い頃からもそうであったのかと尋ね、どのように乗り切ったのか聞く。
「お前と同じだ」
「逃げた」
「そうだ」
「で、どうして母さんを?」
「どうして、そのようなことを聞く」
「ただの好奇心」
何か意味があって尋ねているのかと思ったが、まさかそのような意味だったとは――グレイは呆れてしまうが、だからといって隠すほどのものではないので、息子に自身の過去を語っていく。
それでも妻との出会いを語ることに羞恥心を覚えるのだろう、時折咳払いを繰り返す。
グレイの話では、若い頃シオン同様に統治者一族の名前に惹かれて多くの女が集まってきたという。
その中で見付けたのが今は亡き妻で、A階級の人間。
他の女達とは違い清楚で大人しく、自身の階級を鼻にかけない素晴らしい人物だったと評価し、シオンを笑わせた。