アメット
シャワーを浴びたことにより疲労感は多少緩和されたが、完全に身体が癒されたわけではない。
それでも研究所で日々仕事を行い、プロジェクト成功という父親との約束を果たさないといけない。
また成功は父親との約束だけではなく、シオン自身の夢のひとつである。
だから疲れたと言い、手を抜いて仕事をしていいものではない。
自分は統治者の人間であっても、今はB階級の人間として働いている。
また、望んで苦労が付き纏う科学者の仕事に就いた。
シオンはそう言い聞かせ自分に気合を入れ直すと出発し、研究所に急ぐのだった。
シオンの早い出勤に、徹夜で仕事を行っていた同僚が声を掛けてくる。
もっと遅い時刻に出勤してくると思っていたらしく「真面目すぎる」と言い、もっと気楽にやった方がいいと肩を叩く。
シオンは同僚の意見に苦笑すると、仕事しかやることがないと言い笑いを誘う。
「やっぱり、真面目だ」
「そう?」
「趣味は?」
「趣味か……」
そういえば、シオンは趣味といえる趣味は持っていない。
しいて上げれば、仕事が趣味というのか。
無趣味のシオンに同僚は呆れると、何か没頭できる趣味を持った方がいいと言い、それがいいストレス発散になるという。
同僚の話にシオンは首を傾げると、何がいいか聞き返す。
「何が好き?」
「時折、読書は……している。しているとはいっても、気に入った話があれば読むだけど……」
「それがいいんじゃないか」
「そうか?」
「趣味があるとないとでは、違う。何かに没頭するのは、結構楽しい。という俺は、パソコンが趣味」
「楽しいか?」
「楽しいぞ。仕事の合間……というか、行き詰っている時に適当にサイトを見て気分転換だ」
相手の意見に、シオンはストレス発散方法を知る。
同僚が言っているように趣味を持ち、それに没頭すれば気分もスッキリするだろう。
結果、それがいい仕事に繋がれば何倍もいい。
自分にとって最高の意見にシオンは感謝すると、暇を見て気に入った本を探そうと考える。