アメット

「で、どうだった?」

「何が?」

「休暇」

「……最悪」

「悪かったのか」

「相当」

「そうか、気を付けないと。暇を見て、血液検査くらいはしないと……絶対、引っ掛かるだろう」

「血液検査?」

「やっただろう」

 同僚の言葉に、シオンは曖昧な言い方をする。

 今回の有休は、病院へ検査に行きたい――と言って無理に獲得したもので、同僚も病院であらゆる検査を行ったものだと認識している。

 しかし、本当は統治者一族として苦手としているパーティーに参加していたが、これは内緒である。

「結果は?」

「すぐには出ないよ」

「悪かったら、入院か?」

「入院できる状況じゃないよ。悪かったとしても、薬を飲んで自宅療養……ができればいいけど」

 有休を獲得するのにやっとの状態だというのに、自宅療養で長い休みを獲得するのは難しい。

 最悪「そのままずっと休んでいていい」と言われる可能性も高く、折角目指していた科学者になったのだから、現在の職を失うのは惜しい。

 だとしたら、無理して働かないといけない。

「休み中、何かあったか?」

「いや、特に……ただ、統治者が変わったということで、プロジェクトの成功に葉っぱを掛けられた」

「……なるほど」

「こうやって葉っぱを掛けられたとなると、頑張らないといけないな。そろそろ、結果を出さないといけない」

「しかし、難しい」

「なかなか、切っ掛けが見付からないのが問題か。シオン、何かいい方法を思い付かないか?」

 いい方法が思い付いているとしたら、それを実行している。

 だが、思い付かないからこそ、行き詰っている。

 シオンは同じように「いい方法は」と聞き返すと、同僚は項垂れるしかできない。 

 それだけ浄化プロジェクトには多くの問題が山積し、科学者全員が頭を抱える。


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