アメット

 しかし、いつかは成功する。

 多くの者はそれを信じ、前進する。

 そうでなければ、解決の糸口が掴めないプロジェクトを続ける理由にはならない。

 また大きな原動力は「本物の青空」を見ることだろう。

 人工的に作り出した青空も美しいが、やはり本物には敵わない。

 シオンがそのことを口にすると、同調するように同僚も頷き返す。

「だな」

「今は、映像で我慢」

「シオンと空について話したら、仕事を頑張らないといけないといけない。その前に、仮眠だ」

「眠かったのか?」

「眠いというか、疲れた」

「悪かった」

「シオンが、謝ることはない。お前と話がしたくて、俺が捕まえたんだから。お互い、頑張ろう」

「ああ」

 互いにエールを送り合うと、シオンは自身のディスクに付く。

 すぐに仕事を開始してもよかったが、その前に携帯電話のチェックを行う。

 宇宙に出ていた時は連絡に対しての返信が面倒ということで、電源を切ってあった。

 帰宅後はシャワーや仕事の準備が忙しかったので、今チェックを行う。

 幸い、仕事関係のメールは受信されていなかったが、アイザックからのメール数は半端ない。

 それらのメールは「検査は大丈夫か?」や「無事に終わったか」というもので、中には一緒に検査に行けなかったことを悔しがっていた。

 どうやら、連れがいないと検査に行くのが怖いらしい。

 アイザックの意外な一面にシオンは口許を緩めると、心配してくれたことに礼を言おうと電話を掛ける。

 だが、なかなか電話に出てくれない。

 仕事が忙しく気付いていないのか、それとも熟睡しているのか――シオンは暫く電話を鳴らし続け、アイザックが出るのを待つ。

「よう」

『……何だ』

「電話」

『それは、わかっているが……』

 何か電話に出にくい状況にあるのか、アイザックの言葉は何処か歯切れが悪い。

 シオンはその理由を尋ねると、今自宅にいてトイレから出てきたばかりだという。

 何とも間の悪いタイミングにシオンは吹き出すと、電話を切るからトイレでゆっくりやってくれと伝える。



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