アメット

「自分の評価にしたい……というやつか」

「ああ」

「で、アイディアは?」

「からっきし」

「……いらないな」

「勿論」

 短いやり取りを終えた後、シオンとアイザックは同時に吹き出している。

 これだけ意見が合うのは珍しく、階級の上の者に対して抱く心情は互いに同じ。

 だからといって全員が全員特権階級をフルに利用しているわけではなく、現にアイザックは理想としている上司を語っている。

 アイザックの上司は階級が上の人間だが、自分が持つ権力を行使する人物ではない。

 彼も科学者の一人として外界の浄化の望み、持てる知識を最大限に活用しプロジェクトを支えている。

 しかし科学者として働いている人間が情熱と希望を持っているわけではなく、シオンは彼等に対し「何故、科学者という職業を選んだ」と、疑問視している。

 人間は閉鎖された空間で暮らしているので職業の数が少ないというわけではなく、それに階級が高ければ職業の選択幅も広い。

「第一線での活躍とか?」

「浄化プロジェクトという人類の夢を背負っている、誰もが尊敬の眼差しを向けてくる職業……って、自分で何を言っているんだ。だけど、アイが言うように第一線での活躍はわかる」

「だから、科学者を選択した」

「だろう」

 尊敬を一身に集めたいからといって、科学者は簡単に慣れる職業ではない。

 シオンやアイザックは共に入学と卒業が難しいとされているレベルの高い学校で学び、互いに競うかたちで高い知識を身に付けていった。

 その結果、二人は念願の科学者という職業を手に入れた。

 だが、一部の者はどうか――

 階級を利用し、自分が輝くことのできる職業を選択する。

 彼等にとってそれは当たり前の行動となっているが、同じ職場で働く者にとったらいい迷惑。

 本来、能力とその者の功績に応じて職場での地位が上がっていくものだが、それぞれの人間が産まれたと同時に与えられる階級が絡むと地位が逆転する。

 それはエレベーター方式というべきか、その者の能力が皆無であっても高い階級の者であったら職場での地位が勝手に上がっていく。

 「階級」という馬鹿馬鹿しい制度の影響で均等は崩れ、人類の希望である浄化プロジェクトが成功せず失敗の連続。いまだに成功の糸口は掴めていない。

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