アメット
「……なるほど」
「で、解釈は?」
「俺としては……」
語られる内容に、相手は頷きながら聞き入る。
また、自分では発想できない内容に驚きを隠せず「それはいい」と、嬉しそうにする。
やはりシオンにも聞いて正解だったのか、いい参考になったと喜び、これで止まっていた研究が進むと感謝されるが、シオンにしたらこそばゆい。
「斜め横から、行ってみた」
「そういう柔軟性は、羨ましい」
「時として、屁理屈と言われるけど」
「いいじゃないか、屁理屈」
「そう言ってくれると、安心できるよ。屁理屈とかって、あまり好かれないし嫌われやすい」
「行き詰った時は、そういう屁理屈も大事だと思う。本当に、助かった。また、宜しく頼む」
「ああ、こっちこそ有難う」
そう言い、シオンは受け取った紅茶入りのペットボトルを軽く上げる。
それに合わせるように相手も軽く手を上げると、意気揚々と自分のディスクに戻って行く。
シオンは早速ペットボトルの蓋を開け、口に含む。
これはストレートの紅茶であったが、これはこれで美味しい。
喉が渇いていたのか三分の一ほど飲むと、キーボードを叩き別の仕事を進めていく。
すると仮眠をしていた者達が起き出したのか、あちらこちらで欠伸と共に間延びした声音が響く。
しかしこれもまたいつもの聞き慣れたものであったので、シオンは黙々と仕事を進めていく。
ふと、何か思うことがあるのか、キーボードを叩いている手が止まる。
何気なく周囲に視線を走らせ思うのは、B階級の人間だけでプロジェクトを進めていけないいのではないかというもの。
これに関して足を引っ張っているのはA階級の人間で、彼等がいなければ早く進むかもしれない。
このように真面目に仕事を行い、徹夜が続いても愚痴は言うが仕事の手を緩めるわけではない。
一方、A階級の人間はどうだろうか。徹夜をしている形跡もなく、疲れれば帰宅してしまう。
自分の失敗を部下の責任とし、自分の非を認めようともしないことも多々ある。
だからといって、彼等の能力が低いといっているわけではなく、科学者としてやっているのだからそれ相応の知識と技術を有しているのだが、いかんせん性格が褒められたものではない。
A階級という傲りがそうさせているのか、これに関して階級など関係ないのではないかとシオンは考える。