アメット
「本当に、いいのか?」
「お前を外界へ行かせるのなら、これくらいは我慢するよ。だから、別のことで何かを頼む」
「難しいのは、ちょっと……」
「わかっている」
一体、何がいいか――
どのようなことがいいのか考えていると、アイザックはいい内容を思い付く。
忙しい時、自分の仕事を手伝って欲しい。
シオンは真面目に仕事をこなし、尚且つ考えが合う同士。
これほどの戦力はなく、互いに仕事ができればこれはこれで面白い。
と、シオンを持ち上げていく。
「言っただろう、持ち上げても何も出ないって」
「そうか?」
「そうだよ」
シオンはそのように言うが、アイザックの発言を嫌っているわけではない。
それどころか、友人の発言が嬉しくて仕方がない。
たとえそれが冗談であったとしても素直に受け入れると言い、友人を驚かす。
勿論、アイザックは冗談で言ったわけではなく、本心で言っている。
普段、そのように見ているのか――
シオンの発言に相当のショックを覚えたのか、アイザックがあたふたしだす。
友人の慌てている姿にシオンは吹き出すと、信頼しているからこそこのように冗談を言い合える――と、本音を話す。
シオンの説明に共感する部分が多いのか、アイザックの頷きがそれに続く。
「今のところ、本気で冗談を言うのはアイくらいだ」
「僕も、シオン以外は無理」
「冗談を冗談と取ってくれない……か」
「特に、気難しい奴は……」
「……わかる」
勿論、立場上上司や階級が上の人間に冗談を言うことはできない。
また、同じ階級の者でもアイザックが言うように気難しい人間は冗談を本気と捉えてしまい、ややこしくなってしまう。
それはそれで面倒で、そのような人物には冗談を言わない方がいいと、忠告する。
「実感が籠っているような……」
シオンの指摘に、アイザックは苦笑いを浮かべる。
その者と仲良くなりたくて声を掛け、時に冗談混じりの発言を行ったのだが、それが間違いだったという。
その者は想像以上の頑固者――というか融通が利かない人物で、冗談を冗談と取って貰えず、大事に発展してしまった。