アメット
特にA階級の人間は、出世欲が高い。
統治者に取り入って、自分にとって最高の地位に就きたい――と、欲望に忠実に生きている。
その生き方をシオンは否定することはしないが、いささか度が過ぎる。
結果的に下の階級の者が迷惑するのだから、程々が一番いいと思う。
「さて、話はこれで――」
「そうだね。こうやって上の者も出勤していることだし、いつまでも立ち話はしていられない」
「何かあったら、メールで」
「了解」
アイザックの言葉にシオンは頷くと、互いに軽く手を上げ挨拶を交わす。
案の定、アイザックの読みは正しく、二人が会話を終えそれぞれの仕事場に向かうと、直属の上司が顔を見せる。
早い出勤を苦手としているのだろうが、統治者の意見もあるので文句は言えない。
その分、部下達でストレス発散すればいいという魂胆なのか、いつになく口調は荒々しく態度が悪い。
上司の変化に大半の者達が気分を害するが、流石に言葉に表すことができないので心の中で溜息を付く。
そして何処か殺伐とした空気の中で、仕事が進められていった。
◇◆◇◆◇◆
「聞いたか?」
「何を?」
「家政婦」
「誰か、雇うのか?」
一瞬「家政婦」と耳にし、シオンは動揺を覚える。
いくら裏工作が上手いアムルとはいえ、こんなに早く手続きが可能になるわけがない――と考えていると、家政婦を雇うのは別の人物と判明する。
シオンは殆ど面識がないが、A階級の人間だということは噂で知っていた。
「階級が階級だから、いいんじゃないか。というか、それくらいのことで大騒ぎしなくて
も……」
「そういうことじゃない」
「じゃあ、何?」
もったいぶらずに言ったらどうだ――という態度を示しつつ、相手に早く言うように促す。
シオンの最速に一度咳払いすると、家政婦として雇い入れる者の年齢に皆が驚いているという。
正確な年齢は人伝に聞いたので曖昧となっているが、十代前半というのは間違いないらしい。