アメット

「契約は、成立したのか?」

「したからこそ、騒ぎになっている」

「ああ、そうか」

「で、いいのか? この年齢で」

「普通、十代後半と聞く。確かに年齢だけ聞いていると、騒ぎになるのも……わからなくもない」

「だよな」

 しかし、噂の人物は十代前半の人物を雇い入れる。

 これも、A階級の人間が持つ特権を利用してか――シオンは、後に続く言葉が見付からない。

 これできちんと人権を尊重し適切な態度で接すれば――と雇われる側の立場を考えるが、このあたりは不安要素の方が強い。

「しかし、十代前半か……」

「羨ましい?」

「羨ましいに決まっている……って、シオン! 何を言わせる。こんな恥ずかしいことを言わせるな」

「本音だろう?」

「シオンは、どうだ」

 それについてシオンは曖昧な言い方を繰り返すと、無意識にクローリアの年齢を重ね合わす。

 彼女の年齢は17歳なので噂になっている家政婦の年齢より上らしいが、だからといってこれが噂にならないわけがない。

 何せ、B階級の人間が家政婦を雇い入れるのだから。

 家政婦が側にいれば便利は便利だが、他の部分で問題が発生してしまう。

 羨ましさと嫉妬心が半々というところだろうが、いささか厄介である。

 特に、17歳という年齢に引っ掛かる者も多いだろう。

 現に十代前半の家政婦を雇った者がいると、大騒ぎをしているのだから。

 これについて、アイザックはどのように思っているのか。

 いや、A階級の人間のことはシオンにとってどうでもいい内容で、どちらかといえば自分が家政婦を雇った時の言い訳を考えておいた方がいい。

 それに雇う予定としている人物が最下層の人間なのだから、尚更理由は必要だ。

「深刻な表情をしているぞ」

「まあ、色々と――」

「やっぱり、羨ましいんだ」

 この場合何か反論した方がいいのだが、それでは後が面倒になってしまうと考えたのだろう、シオンは羨ましいということにしておく。

 シオンの発言に相手はこれ以上ない満面の笑みを浮かべると、何度も肩を叩き「やっぱり、自分と同じ意見だった」と、両手を上げ喜ぶ。


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