アメット

「あと、何年掛かるか……」

「何十年じゃないか」

「長い……な」

「何百年の可能性もある」

「延ばすな」

「現実だろう?」

 シオンの的を射た言い方に、アイザックは口をつむぐ。

 確かに現在の状況を考えると、プロジェクトの成功に何百年掛かる可能性が高い。

 いや、それ以前に成功するかどうか怪しい。

 気分が滅入る話にアイザックは嘆息した後、自動販売機からブラックコーヒーを購入する。

 それを一口口に含むと、彼はシオンに外界の様子を尋ねる。

 友人のその質問にシオンは苦笑すると、一言「最悪」と返し、現在の外界の様子と現状について語っていくのだった。

「大気汚染の影響といっても、雨が降らないわけじゃない。定期的に降っている雨の影響で、元気に成長しているのは植物のみ。大半が独自の進化を遂げ、厄介といっても過言じゃない」

「確か、花粉を……」

「知っているのか?」

「有名だから。それに、帰還と同時にシャワーを浴びていただろう? あの時は、悪かった」

「いや、構わない」

「まあ、今回は無事に済んで良かったじゃないか。下手したら、身体の全てを検査されていた」

「あれは不評だよ」

 外界へ調査に赴いた者は、シオン同様に帰還と同時に身体を念入りに洗浄させられる。

 勿論、防護服のお陰で身体に影響が及ばないようになっているが、彼等が纏っている物は人間が作り出した代物。

 時としてその防護服が故障し、生身の肉体に影響が出る場合がある。

 そのような時は、厳重な監視下に置かれ隔離状態で何日も掛け身体の検査が行われる。

 ある意味その検査という名前の生態調査、もしくはモルモット状態に等しいので受けた者はいい感想を述べない。

 それどころか不平不満を漏らし、尚且つ隔離中の飯が不味いと言う始末。

 幸いシオンやアイザックは故障という状況に置かれたことは一度もないが、彼等の階級が階級なので上からの命令を受ければ外界に調査に赴かなければいけない。

 そして運悪く防護服が故障し外界の空気を生身の肉体に浴びてしまえば、不評な身体検査を受けないといけない。
< 12 / 298 >

この作品をシェア

pagetop