アメット

「当たり前だ」

「それを聞き、安心しました」

 と言うが、シオンがイデリアの言葉を本気にしているわけではない。

 何かトラブルが発生した場合「知らぬ・存ぜぬ」で言い通すだろうが、念の為ということでこのように聞いてみた。

 それだけイデリアは部下に信用が薄い上司といっていい存在で、苦手とする者も多い。

「で、今の仕事は」

「一応、順調です」

「一応?」

「何せ、難しく……」

「あまり褒められたものではない」

「申し訳ありません」

 イデリアの感情を刺激してはいけないと、淡々とした口調で言葉を返していく。

 するとイデリアが次に発した言葉によって、やはり上の者の命令が強く働いていることを知る。

 結果を出して褒められ、今以上に出世を――と企んでいるのだろう、言動で瞬時に判断する。

「調査は、いつ」

「いつがいい?」

「と、申されても……」

「四日後は?」

「……構いません」

 今のところ、これといって予定が入っているわけではないので、個人的にいつでも構わないが、そのように決められたのだからそれでいいと受け入れる。

 またイデリアに決めて貰った方が、後々都合がいい。

 だからこそ、シオンはイデリアが決めた日にちに素直に従った。

「期待している」

「……はい」

 それだけを言い残すと、シオンの前からイデリアは立ち去って行く。

 それを確認したかのようなタイミングで、近くで働いている同僚が声を掛けてくる。

 どうやら先程の話に聞き耳を立てていたのだろう、外界への調査命令に同情し、シオンの運の無さに苦笑していた。

「仕方ないよ」

 と、今はそのように返事を返すことしかできない。

 それにイデリアに逆らってもいいことはなく、睨まれたら睨まれたで面倒といっていい。

 そのようなことを考慮して、シオンは外界への調査を受け入れた。

 そのように説明すると、相手は腕を組みながら何度も頷きだす。


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