アメット
第四章 階級制度
イデリアとの約束を果たし、シオンは外界の調査を終える。
今回は「アイザックの検査への同行」の為に再び有休を取りたいので、いつも以上に張り切りいいデーターを収集する。
結果、イデリアの機嫌が頗る良く、これなら簡単に有休を習得できるとシオンはほくそ笑む。
しかし――
現実は、予想外の方向へ動く。
外界の調査終了の翌日、シオンはイデリアの呼び出しに合う。
この時、シオンは「有休が欲しい」と切り出そうとしたが、その前に予想外の単語が口にされる。
シオンはイデリアが発した「家政婦」の言葉に一瞬身体が硬直し、何を言っているのか瞬時に理解できなかった。
「家政婦……ですか」
「手違いか知らないが、許可が下りた」
「俺……ですか」
「そうだ」
有休獲得――しか頭になかったシオンにとって、家政婦の話は思考を混乱させる。
だが、アムルの裏工作を思い出した瞬間、どうしてイデリアにこのような話をされるのか納得する。
イデリアはシオンが家政婦を雇える立場になったことが不満だったが、許可が下りてしまったのだから仕方がない。
「しかし、何故B階級が――」
「それは、上から……」
「だから、信じられないというのだ。本来、家政婦を雇えるのはA階級の人間で……どうして……」
「ですが、決定し……」
「わかっている」
それでもプライドが納得しないのか、イデリアは「特例」というかたちを用いて、無理矢理納得する。
これもまたA階級の権力行使というのはわかったが、シオンは敢て口に出すことはしない。
それどころか「そのような配慮をして頂いたことに、感謝します」と、返す。
「それでいい」
シオンと同等のB階級の人間が横で聞いていたら、何を一人で納得しているのかといい顔をしないだろう。
ただ、イデリアにとって階級が下のシオンが頭を下げればそれでいいと考え、上が決めたことなどどうでもいいというのだろう。
それにこれで満足するのだから、小さいプライドだ。