アメット
「……有難うございます」
「しかし……まあ……」
B階級の人間が家政婦を雇う自体で前代未聞といっていいのに、雇おうとしているのが最下層の者。
これは見物であり、いい噂となって広がっていくだろうと、イデリアは笑い出す。
しかし彼が言ったように「下の者が下の者とつるむ」が世間一般の認識で、特に問題はない。
「後は、自分で何とかしろ」
「はい」
「下がれ」
「……失礼します」
言葉に従いシオンは深々と頭を垂れると、イデリアの部屋を後にする。
何だかんだあったが、上司から雇い方を学び、尚且つ最下層へクローリアを迎えに行く許可が下りた。
これで正式に手続きを行えば、彼女を家政婦として雇え、この階層で共に生活をすることができる。
クローリアには頑張って仕事をして貰い、その代価としてそれ相応の金額を毎月支払えばいいだろう。
いや、その前に教育について考えないといけない。
彼女は勉学に興味を持ち、また見立てでは頭の回転が早い。
レベルの高い教育を施せば、案外化けるかもしれない。
ふと、シオンの口許が緩む。
これから待っている生活に胸が躍るのか、あれこれと計画を立てていく。
一人の生活が長かった影響か、誰かと一緒に暮らすのは楽しみといっていい。
だが、相手は十代の女の子。
それなりの物を用意してやらないといけないと、別の面でシオンは頭を痛めるのだった。
◇◆◇◆◇◆
「わ、私が……」
「そう」
「で、ですが……」
「駄目?」
「いえ、そういう訳では……」
「なら、構わないのでは?」
最下層を訪れたシオンは、真っ先にクローリアのもとへ行くと、自分が家政婦を雇う権利を得たことを話す。
そしてクローリアのことを雇いたいと考えているので、一緒に上の階層へ来ないか誘うが、あくまでも「誘い」であって、別に強制しているわけではないと付け加える。