アメット
「……凄い」
眼下に広がる、はじめて見る光景にクローリアは興奮を覚える。
このマンションは相当高い建物なのだろう、殆どの建物を下に見る。
また行き交う人々は小さく、ちょこちょこと動いている姿は可愛らしい。
それら全てが面白く映るのだろう、クローリアは窓から離れない。
「まだ、天井は明るい。これが暗くなれば、建物の明かりが綺麗に見える。で、一度家に来たのは……」
汚らしい外見をしているクローリアに風呂に入って貰い、身嗜みを整えて貰わないといけない。
今の状況では限られた場所にしか行くことができず、クローリアが恥ずかしい思いをしてしまう。
だから風呂に入って綺麗にしてから、買い物に行こうとシオンは提案する。
案内された風呂場を見た瞬間、クローリアは動揺を隠し切れない。
最下層でも風呂に入るという習慣はあったが、これほど清潔で立派な設備は存在しない。
ましてやシャンプーにリンス、ボディーソープなどを見たことはなく、石鹸で髪や身体全てを洗っていると話す。
「使い方は?」
「教えて頂ければ……」
「わかった。特に、難しくないからすぐに覚えられるよ」
クローリアの頼みにシオンは、使い方を丁寧に教えていく。
そのひとつひとつに頷き返し、時折溜息を漏らしながら感動する。
クローリアにとって一番衝撃的だったのは、お湯が出るシャワー。
このような信じられない設備に「本当に使っていいのですか?」と、聞いてしまう。
「いいよ。クローリアは、この家の家政婦になったのだから。で、着替えはどうしようか……」
現在着ている服を洗濯してしまうと、着る服がなくなってしまう。
だからといって一人で買い物に行っても、女の子の好むファッションはわからないので無理。
それなら一時的に自分の服を貸せばいいと、シオンはクローリアに着替えとタオルの用意をしてくると言う。
「わ、私は……」
「入っていいよ」
「で、では……」
「ごゆっくり」
そう言いシオンは寝室へ向かうとクローリアに似合う服を探すが、なかなかいい服が見付からない。
その中から適当に選び出すと、髪を乾かすのに欠かせないドライヤーとタオルを一緒に持って行く。
それらを風呂場の出入り口付近に置くと、汚れ物の洗濯を開始する。