アメット

 買い物に長い時間を掛けるのは、迷惑になってしまう。

 それはクローリアの気遣いなのか、買い物は予定していた時刻より早く終了する。

 またどれも安い代物で、それに対しシオンは「高い物を買ってもいい」と言うが、やはり気が引けるのだろう安い物しか購入しない。

 今、シオンとクローリアは休憩所に設置されている椅子に腰掛け休憩をしていた。

 買い物を終えたので、次は何をすればいいか。

 そのようなことを考えていると、シオンの腹が間延びした音を鳴らし空腹を訴えてくる。

 その音に苦笑すると、何か食べに行かないか誘う。

「こんなに買って頂いたので、シオン様だけで……」

「腹、減っていない?」

「今は……」

 言葉ではそのように言うが身体は正直で、間延びした腹の音が鳴る。

 突然の腹の音にクローリアは赤面すると、思わず俯いてしまう。

 何ともわかり易い反応にシオンはクスっと笑うと「空腹なら我慢しなくていい」と優しく声を掛け、何か美味しい物を食べに行こうと再度誘う。

「宜しいのなら……」

「勿論」

「何だか、頂いてばかり……」

「後でシッカリと仕事をして、返してくれればいいよ。それだけの仕事を期待しているから」

「頑張ります!」

 そのように気合を入れた瞬間、再びクローリアの腹が鳴り出す。

 タイミングを見計らったような腹の音に、クローリアの顔はこれ以上真っ赤にならないというほど赤面してしまう。

「何が食べたい?」

「お任せします」

「それなら、卵料理はどうかな?」

「卵、食べられるのですか?」

「食べたこと、ない?」

「滅多になく……」

「なら、卵料理にしよう」

「嬉しいです」

 滅多に食べたことがないというのなら、卵を使った料理を食べさせないわけにはいかない。

 シオンはクローリアに代わって荷物を持つと、フードコートへ向かい卵料理が食べられる店を探す。

 見付かったのはオムライス専門店で、この店でいいかと尋ねるとクローリアは瞳を輝かせながら頷いた。


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