アメット

 幸い席は空いていたので、特に待つことはしなかった。

 シオンは腰掛けると同時にクローリアにメニュー表を手渡し好きな料理を選んでいいと言うが、このような料理を見た経験がないのでなかなか選ぶことができない。

 それどころか料理の内容がわからないのだろう、何度も首を傾げている。

 クローリアの反応にシオンは、メニューに書かれている料理の説明を簡単にしていく。

 どれもが美味しそうな料理であったが、クローリアが選んだのはケチャップがかけられたシンプルなオムライス。

 シオンは本当にこれでいいのか尋ねると、彼女は卵を美味しく食べたいと話す。

「飲み物は?」

「紅茶は、ありますか?」

「あるよ」

「美味しい飲み物と、噂で聞き……できましたら、その紅茶という飲み物を飲めましたら……」

「それは、構わないよ。遠慮なく、飲んでいいよ。で、紅茶は美味しいといえば美味しいけど、個人的にはコーヒーが好きだったりする。だからといって、嫌いで飲めないわけじゃない」

「そのコーヒーというのは?」

「苦い飲み物」

「苦いのですか?」

 クローリアはシオンが話すコーヒーが美味しい飲み物なら試したいと考えていたが、コーヒーが「苦い飲み物」だと聞き、クローリアの表情が歪み出し躊躇ってしまう。

 しかし何事も一度は体験した方がいいので、紅茶とは別にコーヒーも一緒に注文すればいいと誘う。

 シオンの提案にクローリアは頷くと、苦い飲み物「コーヒー」に挑戦することにした。

 ウエイトレスに一通りの料理の注文を行うと、シオンはクローリアに今日の買い物の感想を話し出す。

 その言葉にクローリアは何度も頭を振ると、自分も買い物を楽しむことができた。

 また、ドーム上部の立派で素敵な世界を体験できたことが嬉しいのか、ついつい早口になってしまう。

「あとは、パソコンか」

「買って頂けると言っていましたが、やっぱり何と申しますか……今日、これだけの物を……」

「パソコンは、これから絶対に必要になってくる。それにこの階層の者は、一人一台が当たり前だったりする。前に言ったように、俺のパソコンは同じ科学者以外触って欲しくない。下手に弄られて重要なデーターが消えてしまったら仕事が進まないし、上司に怒られる」



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