アメット

 だから、早く外へ――

 それが、シオンの願い。

「かっこいいです」

「そうかな」

「はい。とてもかっこいいです。シオン様が参加しているプロジェクトって、人類の希望といいますか……私のような学のない者では、考えられない世界にシオン様はいらっしゃいます」

「希望……か。そうなればいいね。いや、そうならないといけない。多くの者が望んでいる」

「私もその一人です」

「待っている人がいるのなら、一日も早く可能にしないといけない。といっても、俺は下っ端だけど」

「ですが、科学者です」

 面と向かってそのようなことを言われたことがないので、クローリアの正直な感想に身体がこそばゆくなってしまう。

 しかし嬉しいという気持ちがないわけでもなく、シオンは「有難う」と礼を言い、できるだけ早くプロジェクトが成功するように努力し続けると付け加える。

 すると二人の会話を遮るかのように、ウエイターが注文した料理を運んで来る。

 それはクローリアが注文したオムライスで、立ち上る熱々の湯気が食欲を刺激する。

 卵の上にかけられたケチャップのコントラスが美しく、また夢にまで見た料理の登場にクローリアの瞳が輝く。

 何ともわかり易い反応にシオンはクローリアの目の前にスプーンを差し出すと、先に食べていいと促す。

 またいつまでもお預け状態は精神と胃袋に悪影響で、彼女にとっては拷問に近い。

「宜しいのですか?」

「腹、空いているだろう?」

「……はい」

「だから、先にいいよ」

「い、いただきます」

「こういう時は、遠慮しなくていい。だから俺の帰宅が遅い時は、先に食事をしていて構わない。ほら、早く食べないと。こういう料理は熱いうちに食べた方が、何倍も美味しかったりする」

 オムライスをスプーンで掬い頬張った瞬間、クローリアは身体が硬直する。

 予想以上の味わいに言葉が出ないのか、シオンの「美味しい?」という質問に、頷くことしかできない。

 これだけ美味しそうに食べられるとシオンの方も嬉しくなり、また見ていても気持ちがいい。


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