アメット
クローリアの好物は、オムライス。
この食べっぷりに、シオンは確信する。
クローリアの食べる姿を眺めていると、シオンが注文したチーズ入りのオムライスが運ばれてくる。
仕事以外一人で食事をしていることが多いが、このように誰かと食事をすると食べ物が一段と美味しく感じられ、またクローリアの食べ方に触発されたのか胃袋が鳴り出す。
目の前で恍惚の表情を浮かべオムライスを頬張っているクローリアは可愛らしく、ついつい視線が其方に行ってしまう。
するとシオンの視線に気付いたのかクローリアはオムライスを口に入れた状態で硬直し、また見られていることが恥ずかしかったのか徐々に頬が紅潮していく。
「どうした?」
「そのように見られますと……」
「ああ、御免」
流石に「豪快な食べっぷりに惚れ惚れし、眺めていた」と言ったら可哀想なので、シオンは瞬時に視線を下に向けると黙々とオムライスを食べだす。
シオンの視線が無くなったことに安心したのか、クローリアも止まっていた食事を再開する。
そして綺麗にオムライスを食べ終えると、飲み物で一服。
その後、会計を済ませた二人はマンションへの帰路についた。
「クローリアは、この部屋を使っていいよ。ちょっと汚いから、掃除をしないといけないけど……」
「いえ、部屋を頂けるだけで十分です」
「専用の部屋だから、好きに模様替えをしても構わない。ただ、大きい物を入れる時は言って欲しい」
「わかりました」
「流石に同室というわけにもいかないし、それに生活スタイルが別々だから別れさせたんだ」
主だった理由として、年頃の女の子と同室は恥ずかしくプライベートを守らないといけない。
また仕事に集中したい時などクローリアが側にいると、気になって仕事にならない。
それ以上に間違って仕事関係の物に触れられたら後々が面倒なので、このような形を取った。
シオンの話に納得できたのかクローリアは頷くと、自分専用の部屋を見回す。
彼女にとって窓が設置されていることが余程嬉しかったのか、窓の側に行くと眺望を確認する。
クローリアのはしゃぎようにシオンはフッと笑みを漏らすと、自身の部屋から寝具を持ってくる。