アメット
「着替えなかったんだ」
「昨晩は、疲れ……」
「パジャマは?」
「買って頂いたのであります」
「それならいいけど。で、今から朝食を作る。料理器具の使い方を教えるから、準備が整ったらキッチンに来て欲しい」
「すぐに行きます」
クローリアは乱れた髪を手で簡単に整えると立ち上がり、シオンと共にキッチンに向かう。
シオンは冷蔵庫を開け中に残っている食材を確かめるが、いかんせん量が少ない。
これだと大した料理を作ることができず、二人分にしてみると少なくなってしまうが食べられないよりいい。
「これ、冷蔵庫ですか?」
「そうだよ」
「此方の冷蔵庫って、立派です」
「最下層に、冷蔵庫って……」
「あります。ありますが、こんなに綺麗ではなく……それによく壊れて、ちょっと使い勝手が悪かったです」
「冷蔵庫があるなら、これは?」
シオンが指で指示した先に置かれているのは、複数の機能を備えた電子レンジ。
見たことのない四角い箱にクローリアは頭を振ると、どのように使えばいいか尋ねる。
シオンは簡単に使い方を説明するが彼女にとって難し過ぎたのだろう、何度も首を傾げ表情が強張る。
「難しい?」
「難しいですが、きちんと覚えます。使い方を覚えないと、仕事をすることができませんので……」
「なら、一回使ってみる」
冷蔵庫の中から食パンを取り出すと、クローリアに電子レンジを操作させてみせる。
説明を聞いている時はよくわからなかったが、いざこのように自分で操作してみると簡単に使うことができたのだろう、動き出した電子レンジの前で「使うことができました」と、笑顔を作る。
「これで、時間が経過すればパンが焼ける。で、後は野菜とベーコンが余っているけど……」
シオンが残っている食材をどのように調理すればいいかと悩んでいると、クローリアが野菜炒めにすれば美味しく食べることができると提案する。
勿論、家政婦として自分が頑張って作ると宣言し、慣れた手付きで野菜とベーコンを均等なサイズで切り調理を開始する。