アメット
「そいつは同じ階級の人間で、話が合ういい友人だ。いずれ会うことになうと思うが、いい奴だ」
「楽しみです」
「でも、あまり期待しない方がいい。同じ科学者といっても、凄く立派な人物ってわけじゃない」
その者は、どのような人か――
流石に根掘り葉掘り尋ねるわけにはいかないので、クローリアはシオン同様に食事を再開する。
食事後、シオンが仕事に向かう準備をしている間、クローリアが使用した食器を洗う。
その最中も高い文明の利器に感動し、特に水道から温水が流れることに一喜一憂する。
「仕事に行く前に、家政婦用のカードの手続きを行う。で、発行されたカードを持って一度帰宅する」
「わかりました」
「掃除と洗濯を……」
と言い掛けて、シオンは言葉を止めてしまう。
果たして、クローリアは乾燥機を使ったことがあるのか。
最下層に訪れた時、住民は洗濯物を家の内外に干していたことを思い出したシオンは乾燥機について尋ねると、予想通りクローリアは乾燥機の使い方を知らなかった。
「使い方を教える」
クローリアにとって先程の電子レンジと違い此方の方が使い方が簡単だったのだろう、二度ほどの説明である程度使い方を理解する。
シオンは説明の後クローリアに寝室以外の部屋の掃除と洗濯と乾燥を頼むと、自分は用意してあった荷物を片手にカードの発行に向かう。
シオンが出て行った後、クローリアは課せられた仕事をこなしていく。
環境が違うので完璧に行うことは難しかったが、丁寧にひとつひとつ片付けていく。
部屋の掃除は掃除機を使おうとしたが、壊してしまう心配があったのでバケツと雑巾を持ち出しそれで掃除を行う。
勿論手作業での掃除は時間が掛かってしまうが、クローリアはこのようなことは苦にならないのだろう、部屋の隅々まで丁寧に掃除を行う。
ふと、シオンの寝室の前で足が止まる。
私物に触れてほしくないので寝室への立ち入りは禁止されているので、勝手に掃除するわけにはいかない。
(どんな部屋なのかしら)
人間「駄目」と言われると、好奇心が擽られる生き物。
しかしシオンの命令があるので勝手に立ち入っていいものではなく、後で立ち入ったとわかったら何と言われるだろうか。
折角手に入れた仕事を首にされたら、どのような顔をして最下層へ戻ればいいかわからない。