アメット

 また、クローリア側にもアイザックが訪ねて来ることを伝えておかないといけない。

 気の知れた友人なので特別に持て成す必要はないが、クローリアはそれを許さないだろう。

 彼女の性格からしてそれ相応の準備をして待つだろうと話すと、アイザックは期待しているという。

「いつ?」

「週末」

「休みなのか?」

「珍しく」

「俺は、どうか……」

「無理なら、また今度」

「いや、仕事は何とか片付けるよ。久し振りに、アイとゆっくり話したいって気持ちもある」

「無理するなよ」

 このようなことを言うと、シオンは無理して仕事をこなすことが多い。

 それを知っているアイザックは、体力の限界を感じる前に休憩を取るように促す。

 愚痴を言い合い現在の不満を語ることができるシオンが倒れては、アイザックにとって日々の張り合いがなくなってしまう。

 そのように語るアイザックにシオンは「言い過ぎ」と返すが、内心は嬉しかったのだろう口許が緩む。

 それを見逃さなかったアイザックは表情を綻ばすと、何か言葉を発することはしない。

 ただ、これからの仕事を頑張ってやっていこうと、シオンの肩を叩くのだった。

「……有難う」

「何?」

「いや、別に……」

「そうやって言われると、こそばゆいな。何か言いたいことがあるのなら、言ってもいいぞ」

「いいのか?」

「何か、あるのか!?」

「……まあ」

「冗談で、言ったんだが……」

「今は、言い難い」

「なら、お前の家に行った時に……」

 その意見に対し、シオンは頭を振る。

 できるものならアイザックだけに知らせたく、クローリアには内緒にしておきたい。

 これについては、まだ誰にも話してはいない。

 それにアイザック以外の同僚や上司に聞かれたくないので、今日の遅い時間に二人っきりで会いたいという。


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