アメット
「二人の秘密か」
「それで頼む」
「わかった。で、統治者の話を――」
「聞きたいか」
「勿論。どういう世界か気になるし、何より普通に生活していれば知らない世界だったりする」
「愚痴が多くなるよ」
「構わない。愚痴は聞き慣れているし、どういう愚痴を言うか楽しみだ。それに、真面目な話はつまらない」
「……確かに」
「で、家政婦の子は?」
「言っていない」
その返答にアイザックは顔を顰めるが、よくよく考えれば確かに言い辛い内容である。
また相手は最下層の住人なので、シオンは統治者と知ったら上と下という明確な格差を感じてしまい居心地が悪くなってしまう。
だから今のところは内緒にしておくと、シオンは話す。
「遊びに行った時、内緒にしておく」
「助かる」
「しかし、何と言うか……」
「うん?」
「こんなに近い場所に、凄い奴がいたとは……まさか、他の統治者一族も変装していたり……」
「それはない。あいつ等は、下の階層に行くのを嫌っているし、下の者を完全に見下している」
「酷いな」
同じ統治者一族ながら、他の者達の心の狭さに何も言うことができないのだろう、シオンは苦笑いを浮かべるしかできない。
ただ、シオンの父親は他の統治者と違い下々の生活に目を向けているので、一緒にしないで欲しい――
と、何処か不満そうにアイザックに言い返す。
「そんな立派な人が、ずっと統治者としてやっていくわけにはいかないのか? 僕としては歓迎だ」
「なかなか難しい」
同じ人物が長く統治者の座についていると、独裁になってしまうから決まった年月で交代を繰り返す。
というのが建前上の理由だが、シオンは何か裏側に隠されているのではないかと読む。
何より統治者として君臨している時は、下の者から敬われ多くの金が流れるからである。