アメット
信じる。
シオンにとって、この言葉が嬉しかった。
仲良くやっているアイザックから一方的に壁を作られたら、シオンは大事な友人を失ってしまっていた。
しかしアイザックの言葉を聞いているとその心配はなく、それどころかこれから先も仲良くやっていこうと約束してくれた。
アイ、なら――
流石に統治者が暮らす場所へ連れて行くわけにはいけないが、父親に「いい友人がいる」と、話してもいいだろう。
人間、本当に信頼できる友人がいると救われるというが、まさにアイザックがそれに当て嵌まる。
これに、あれこれと言える関係こそ人生に張り合いが生まれる。
心の中に仕舞い込んでいた、ひとつの重荷を取ることができた。
やはり友人に黙り続けていることは気が引け、アイザックに話すことにした。
話したことにより真の味方を得たような感じがし、徐々に口許が緩んでいく。
それだけ今回の告白は、シオンにとって大きい。
(……頑張らないと)
シオンは自分専用のディスクに戻ると、椅子に腰掛けパソコンを立ち上げる。
いつか父親の跡を継ぎ統治者としてドームを統率していかないといけないが、その前までにプロジェクトを成功させないといけない。
そう改めて決意すると、シオンは黙々と仕事を進めていく。
(あっ! クローリア)
途中で、クローリアのことを思い出しキーボードを叩く手が止まる。
だが、クローリアは携帯電話を持っていないので連絡することはできない。
このような時の為に、彼女専用の携帯電話を契約するべきだろう。
彼女用のパソコンといい、何かと出費が掛かると顔を顰める。
パソコンや携帯電話等、文明が発展すると何かと便利な代物が増えていくが、いかんせんそれに比例して出費がかさんでしまう。
科学者としてそれ相応の給料を貰っているが、だからといって全てが賄えるものではない。
こうなるとクローリアの給料が少なくなってしまうと、頭痛を覚える。
(だから、A階級か)
A階級以上の者が家政婦を雇えるとなっているが、今回クローリアを雇ったことでその意味を知る。
大まかな理由は「上の階級の特権」となっているが、得られる給料が多いからという部分も関係している。
B階級で尚且つ科学者のシオンもいっぱいいっぱいの状態なので、A階級以上の者ではないと余裕を持って雇うことができない。
それでも雇ったからにはそれなりの生活をさせないといけないし、一人暮らしをしていたシオンにとってクローリアが側にいると張り合いが生まれる。