アメット

 やっぱり、誰かが側にいるといい。

 統治者一族として生まれながら、今はB階級として望んだ科学者として日々研究を行っている。

 恵まれている。

 今の状況を思うと、そのように言えなくもない。

 その中で心が許せるアイザックに出会うことができ、今は真面目でクローリアを家政婦として雇っている。

 これで不満を言ったら罰が当たってしまいそうだが、不満を言わないで生活できるほどシオンの性格は丸くはない。

(上司が……)

 それがシオンの本音で、自分の本音が愉快で面白かったのか苦笑してしまう。

 しかし笑っていられる余裕はシオンにはなく、気合を入れ直すと仕事を再開する。

 そしていつもより早い速度でこなし割り当てられた仕事を終了させると、クローリアが待つ自宅へ帰るのだった。


◇◆◇◆◇◆


「クローリア」

「お帰りになられましたか」

「ただいま」

「お帰りなさい」

 このように誰かに出迎えてくれる人物がいなかったので、シオンにとって小恥ずかしい以外何物もない。

 クローリアも同様の感情を抱いていたのか、オドオドした態度を取りながらご飯を用意してあるという。

 クローリアの料理にシオンは瞬時に食い付くと、どういう料理を作ったのか聞き返す。

「サンドイッチを作ってみました」

「サンドイッチは好きだよ」

「あと、ポテトサラダです」

「結構、頑張ったね」

「本当はもっと手を掛けた料理を作ればいいのですが、まだ家電を使いこなせず……すみません」

「最初から、そういう料理は期待していないよ。ただ、美味しい料理は食べたい気持ちがある」

 そのように言われて、頑張らないわけがない。

 クローリアは力強く返事を返すと、テーブルの上に作った料理と飲み物を並べていく。

 特にシオンの口に合ったのはポテトサラダで、丁度いい味付けが絶妙。

 店で売っているポテトサラダより美味しいと褒め、クローリアを喜ばせた。


< 171 / 298 >

この作品をシェア

pagetop