アメット

「いいって」

『急に、どうした』

「断ったことに、罪悪感を抱いたようだ」

『……いい子過ぎる』

「それ、同意見」

『そんなにいい子なんだから、大事にしないと罰が当たる。で、有難うって伝えておいて欲しい』

「了解」

『やあ、明日』

 そのように言い残すと、アイザックが電話を切る。

 電話が切られる音を確認するとシオンは携帯電話をポケットに仕舞い、友人が料理を作ることを了承してくれたことを感謝していると伝える。

 シオンからの伝言にクローリアは嬉しかったのか、表情がパッと明るくなった。

「優しい友人ですね」

「いい人だよ」

「美味しい料理を作らないと……」

「あいつは大食いじゃないから、普通の量でいい」

「その……料理ですが……」

「何?」

「料理の本とか、あるのでしょうか?」

「本?」

「シオン様に多くの料理を食べて頂きたいのと、折角ご友人に食べて頂くので種類を増やしたく……」

「ああ、そうか」

 現在、レシピを調べるには携帯端末やパソコンを使うのが支流だが、それらを持っていない使いこなせないクローリアの場合、欲している本が一番いいだろう。

 しかしそのような本を購入したことがないのでどのような代物がいいかわからないが、駄目と言うことはない。

「お給料から引いていいです」

「どういう意味?」

「頂いてばかりで」

「別にいいよ」

 といって、クローリアが素直に受け入れてくれるわけがない。

 まだ家政婦として半人前以下なので、この状態で給料を貰うのは心苦しいという。

 それについてシオンは「構わないよ」と言い掛けるが、これでは彼女の気持ちが治まらないので「今月は半分でいいか?」と聞く。


 
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