アメット
「一度、戻るか」
「そうするか」
その言葉と共に二人は椅子から腰を上げると、部屋から出て行く。
全員がアークのもとへ行ってしまったのか、廊下は静寂に包まれていた。
その状況にシオンは嘆息し、アイザックは肩を竦める。
統治者が来たのだから仕方がないことだが、聊か大袈裟ではないかと二人は考える。
「どうする?」
「待っている」
「会いたくない?」
「そういうことだ」
あの時は将来がバレずに済んだが、次に会った時はわからない。
なるべく接触の回数を減らし、気付かれないようにしないといけない。
だからシオンはアークと会うことを拒み、アイザックも友人の気持ちを理解しているのだろう、無理にアークのもとへ行こうとはしない。
「……なあ」
「何?」
「統治者って、何なんだろう」
「ドームの頂点に立ち、多くの人間を統治する」
「それはわかっている。ただ、どうして三大一族が統治者の地位に就いたのか……気になった」
「そのことは、俺も気になっている。だから父さんに聞いたけど、明確に答えてはくれない」
「曖昧?」
「そんなところだ」
しかし父親の反応からして、全く知らないというわけではない。
何か、隠している――と考えるが、やはり聞くことができなかった。
また、無理に聞いても黙り込むのはわかっているので、いまだに真相は不明。
そう、アイザックに話と渋い表情を作り唸り声を発する。
「怪しい」
「そう思うか?」
「話したくない理由があるとか?」
「俺も、そう思う」
息子に話すことのできない、特別の何かが隠されている。と、シオンは考える。
いい意味なら堂々と話してもいいが、話せないとなると悪い意味が含まれている可能性が高い。
同時に、真相を他の二つの一族も知っているのか疑問になる。
だが、そのような話を耳にしたことはない。