アメット

「何年?」

「五年」

「それくらいなら、買い替えか」

「ちょっと速度が遅い」

「仕事上では、不便だね」

「安いのを買う」

「安くていいのか?」

「本当は高いのを買いたいけど……か、金が……こればかりは仕方ない。他の職業に比べれば、いいけど」

 互いに金欠の部分を理解し合えるので、同時に溜息を付く。

 確かに給料がいい方とはいえ、だからといって裕福なわけではない。

 二人より多くの給料を貰い、いい生活をしている者も多い。

 身近にいるのは二人の上司で、身に着けている品々が高級品というのが証拠だ。

 その時、間延びした音が響く。

 音の正体は腹が空腹を訴える音で、シオンとアイザックのどちらかではなく、タイミング良く二人同時に腹の音が鳴った。

 二人とも殆ど胃袋に何も入れていない状態で仕事をしていたので、とうとう限界に達してしまったのだろう、再び腹の音が鳴る。

「飯、食わないか?」

「そういえば、腹が減った」

「買い物の前に、食いに行くか」

「そうだね」

「何を食う?」

「腹に溜まるのがいい」

「米類?」

「それ、いいかもしれない」

 アイザックが上げた「米」という単語に、シオンはクローリアの好物を思い出す。

 そのことをアイザックに話すと「卵と米がマッチしている」と、オムライスについて語りだす。

 彼もオムライスのことを美味しいと思っているのだろう、それについてシオンも同意していた。

「オムライスにするか?」

「いいね」

「それに、値段も手頃だ」

 今、二人にとって大事なのは、値段の割には腹がいっぱいになる食べ物。

 それにお互い美味しいと思っているので、特に異論が上がることはない。

 駅に到着すると同時に急いで降りると、オムレツを提供する店へ急ぐ。

 腹が減っていることが影響しているのか、二人の歩く速度は早かった。

< 198 / 298 >

この作品をシェア

pagetop