アメット
「何年?」
「五年」
「それくらいなら、買い替えか」
「ちょっと速度が遅い」
「仕事上では、不便だね」
「安いのを買う」
「安くていいのか?」
「本当は高いのを買いたいけど……か、金が……こればかりは仕方ない。他の職業に比べれば、いいけど」
互いに金欠の部分を理解し合えるので、同時に溜息を付く。
確かに給料がいい方とはいえ、だからといって裕福なわけではない。
二人より多くの給料を貰い、いい生活をしている者も多い。
身近にいるのは二人の上司で、身に着けている品々が高級品というのが証拠だ。
その時、間延びした音が響く。
音の正体は腹が空腹を訴える音で、シオンとアイザックのどちらかではなく、タイミング良く二人同時に腹の音が鳴った。
二人とも殆ど胃袋に何も入れていない状態で仕事をしていたので、とうとう限界に達してしまったのだろう、再び腹の音が鳴る。
「飯、食わないか?」
「そういえば、腹が減った」
「買い物の前に、食いに行くか」
「そうだね」
「何を食う?」
「腹に溜まるのがいい」
「米類?」
「それ、いいかもしれない」
アイザックが上げた「米」という単語に、シオンはクローリアの好物を思い出す。
そのことをアイザックに話すと「卵と米がマッチしている」と、オムライスについて語りだす。
彼もオムライスのことを美味しいと思っているのだろう、それについてシオンも同意していた。
「オムライスにするか?」
「いいね」
「それに、値段も手頃だ」
今、二人にとって大事なのは、値段の割には腹がいっぱいになる食べ物。
それにお互い美味しいと思っているので、特に異論が上がることはない。
駅に到着すると同時に急いで降りると、オムレツを提供する店へ急ぐ。
腹が減っていることが影響しているのか、二人の歩く速度は早かった。