アメット

 これでパソコンの購入が終了したが、次に待っている事柄が最大の難問といっていい。

 しかしこれをクリアしなければ、先に進むことができない。

 これが明るい未来に繋がっていることがわかっているからこそ、二人は何度も溜息を付くが、決して逃げることはしない。

「さて、行こうか」

「頑張ろう」

「で、終わったら……」

「勿論、愚痴大会」

「だな」

「それがないと、ストレスが溜まる」

 互いの気持ちを理解しているからこそ、本音が混じった言葉。

 シオンとアイザックは苦笑しつつ肩を並べながら店の外へ出ると、他愛のない会話を交わしながら再び駅に向かった。

 そして研究所に到着すると同時に、それぞれの上司のもとへ向かい真相を事細かに話だした。


◇◆◇◆◇◆


「やあ」

「……やあ」

「で、そっちは?」

「何とか……で、アイは?」

「此方も、何とか」

 相当な目にあったのだろう、シオンとアイザックの顔は疲労困憊状態だった。

 これは仕事なので愚痴を言われる筋合いはないのだが、シオンが予想した通り上司は愚痴を言ってきた。

 部下に対し一言愚痴を言わないと済まないのだろう、困った性格とアイザックは嘆く。

「まさか、家庭環境を――」

「有り得る」

「そうだったら、最悪だ」

「そういうことは、仕事に持ち込まないでほしい。いつも迷惑が掛かるのは、下の者だから」

「同感」

 上司の発言で改めて知るのが、仕事まで階級制度を持ち込む者が多いということ。

 これでは、まともに仕事が捗れない。

 この状況にシオンは「父親が現状を見たら、何と言うのか……」と、心の中で呟く。

 流石にこの現状を目撃したら、沈黙を続けることはできないだろう。

< 203 / 298 >

この作品をシェア

pagetop