アメット
これでパソコンの購入が終了したが、次に待っている事柄が最大の難問といっていい。
しかしこれをクリアしなければ、先に進むことができない。
これが明るい未来に繋がっていることがわかっているからこそ、二人は何度も溜息を付くが、決して逃げることはしない。
「さて、行こうか」
「頑張ろう」
「で、終わったら……」
「勿論、愚痴大会」
「だな」
「それがないと、ストレスが溜まる」
互いの気持ちを理解しているからこそ、本音が混じった言葉。
シオンとアイザックは苦笑しつつ肩を並べながら店の外へ出ると、他愛のない会話を交わしながら再び駅に向かった。
そして研究所に到着すると同時に、それぞれの上司のもとへ向かい真相を事細かに話だした。
◇◆◇◆◇◆
「やあ」
「……やあ」
「で、そっちは?」
「何とか……で、アイは?」
「此方も、何とか」
相当な目にあったのだろう、シオンとアイザックの顔は疲労困憊状態だった。
これは仕事なので愚痴を言われる筋合いはないのだが、シオンが予想した通り上司は愚痴を言ってきた。
部下に対し一言愚痴を言わないと済まないのだろう、困った性格とアイザックは嘆く。
「まさか、家庭環境を――」
「有り得る」
「そうだったら、最悪だ」
「そういうことは、仕事に持ち込まないでほしい。いつも迷惑が掛かるのは、下の者だから」
「同感」
上司の発言で改めて知るのが、仕事まで階級制度を持ち込む者が多いということ。
これでは、まともに仕事が捗れない。
この状況にシオンは「父親が現状を見たら、何と言うのか……」と、心の中で呟く。
流石にこの現状を目撃したら、沈黙を続けることはできないだろう。