アメット

「大丈夫なのか?」

『問題ない……と』

「父さんが、そう言うのなら……」

『また、いつものように』

「わかった」

『失礼します』

 そう言い残し、アムルは電話を切る。

 パーディーが五日後に行われるというのなら、早めにクローリアに話しておかないといけない。

 それにシオン自身、クローリアを連れて行くつもりであったが、いざ話を切り出すとなると、適切な言葉が思い付かないので助力を求める。

 真っ先に思い付いたのは、アイザック。

 アイザックは正体を話してあるので、何ら問題はない。

 適切な回答を貰おうとシオンは電話を掛けようとするが、寸前で手が止まる。

 シオンの視界に映り込んだのはクローリアで、彼女はシオンを探していたのだろう声を掛けてくる。

「どうした?」

「わからない問題が……」

「ああ、そうか」

「お食事は?」

「今、作る」

「お忙しいのでしたら、やはり私が……」

「いや、そんなことはないよ。同僚から電話があって、それに出ていたんだ。ちょっと仕事が立て込んでいるらしく、予定が狂ったと連絡してきた。だから、まだ料理は作っていない」

「そうでしたか」

「今、作る……って、その前に問題か」

 シオンは携帯電話をポケットに仕舞うと、クローリアと共に彼女が勉強している部屋に向かう。

 そして彼女が指示している画像を眺めつつ、どのような部分がわからないか説明を求める。

「これの意味が……」

「ああ、これか」

「どうすれば、解けるのでしょうか」

「この問題は……」

 一通り説明を行った後、シオンはクスっと笑ってしまう。

 シオンの笑いにクローリアは「このような問題もわからないから、笑われてしまった」と、勘違いする。

 勿論シオンはそのようなことで笑ったわけではなく、昔同じ問題を解いたことを思い出したから笑ったと話す。

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