アメット

「クローリア」

「はい!?」

「そんなに、驚かなくとも……」

「す、すみません」

「いや、今から言うことの方が、もっと驚くか……」

「重要なことでしょうか」

「重要だね。とても……」

 途切れ途切れに語るのは、自身の正体。

 自分の本当の名前に、B階級の人間ではなく統治者一族の者。

 アイザックに語った時と同じように、クローリアにも隠さず話していく。

 そしてパーティーは統治者一族のひとつ〈アンバード家〉が主催することも、彼女に話した。

 シオンが語る話に、クローリアの頭が混乱する。

 真っ先に思い付いたのは、どうして統治者の人間が階級を偽っているのか――

 それについてシオンは、階級に縛られることなく科学者として働きたいからと言う。

 統治者として働きだせば周囲が嫌というほど持ち上げ、自由に仕事ができない。

 それに出世の為に頭を下げられるのも、好きではない。

 だから階級を偽って就職し、大変ながらも充実した毎日を送っているという。

「ご友人は……」

「アイは、知っている。この前話して、信じて貰った。クローリアのように、驚いていたけど」

「驚きます」

「……だね」

「その……シオン様は統治者一族で、科学者として働く為に階級を偽って、今のB階級で……」

「そう」

「正体は、ご友人だけ知っていて……」

「ああ」

「ほ、本当ですか!」

 「自分は、統治者の人間です」と言われも瞬時に受け入れることができないのだろう、クローリアの混乱は続く。

 シオンは淹れ立ての紅茶をクローリアに差し出すと「すぐに受け入れなくてもいい」と声を掛けると、紅茶を口に含む。

 シオンに誘われるようにクローリアも紅茶を口に含むが、熱くて呑み込めない。

 なんとか胃袋に流すと、今度は熱い紅茶に息を吹きかけ冷ます。

 シオンもクローリアも何と言葉を掛けていいかわからいのか、熱い紅茶を飲み続ける。

 そして紅茶を全て飲み干した頃、シオンは「パーティーまで五日あるので、ゆっくり考えればいい」と言い、表情を緩ます。

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