アメット
どうすればいいか――
と悩んでいると、控え目にドアが叩かれる。
その音にクローリアは反射的に声を掛けると、ドアを叩く人物がシオンと判明する。
朝からシオンに会える――というのは嬉しいが、寝起きの顔を見られたくないので躊躇いも強い。
どうすればいいかとアタフタしていると、再びドアが叩かれる。
「ま、待って下さい」
「どうした」
「まだ、寝起きで……」
「待っている」
「す、すみません」
シオンを待たせてはいけないと、クローリアは慌ててベッドから降りようとする。
しかし痛めている足首に痛みが走るのだろう、悲鳴を上げつつベッドから落ちてしまう。
悲鳴と鈍い音にシオンはクローリアの身に何かが起こったと判断し、失礼とわかっていながら部屋に立ち入る。
立ち入ったと同時にシオンの目に映ったのは、床で倒れ込んでいるクローリアの姿。
その姿に焦ってしまったのだろう、シオンは彼女のもとへ急ぐとしゃがみ込み、様子を尋ねる。
「ど、どうした」
「落ちてしまい……」
だが、言葉は最後までつむがれることはない。
寝起きの顔を見られた――という気持ちの方が強く働いてしまったのだろう、掛け布団に顔を埋めてしまう。
クローリアの反応にシオンは自分が悪いことをしてしまったと顔を顰めると、クローリアを見ないよう背中を向ける。
「……悪い」
「い、いえ」
「大丈夫か」
「あ、足首を――」
「痛めたか」
「はい」
「慣れないドレスと慣れないハイヒールだったから、仕方がない。朝食は、持って来させよう」
「有難うございます」
クローリアは寝顔を見られたくないと拒んでいるが、床に座らせたままではいられない。
シオンはクローリアの側に行くと抱きかかえ、そのままベッドの上に横たわらせる。
シオンにとっては一瞬の出来事であったが、クローリアにとっては長い時間に等しく、思わず目を見開く。