アメット
流石に今の反応で、シオンはクローリアが何を抱いているのか大体理解する。
しかしそれについて、シオンは明確な言葉を発することはしない。
ただ、彼女の反応は嬉しかったのだろう、心がチクっと痛みだすが、これについてもシオンは言葉として表すことはしない。
「有難うございます」
「……いや」
だが、後の言葉が続かない。
暫くの沈黙の後、やっとの思いで口に出したのは、治療に必要な道具を持って来るというもの。
また、痛みが続くようであったら、暫く父親の世話になっていいという。
シオンの提案にクローリアは頭を振ると、自分は家政婦なのでシオンの世話をしないといけないと話す。
「だけど……」
「い、いけませんか?」
「……クローリアの性格は、そうだったね」
根が真面目なクローリアは、仕事を忠実にこなす。
そして、一人にされることを拒む。
そのことを思い出したシオンは苦笑しつつ、彼女の願いを受け入れることにした。
シオンが一緒に帰宅することを許してくれたことにクローリアの表情は綻び、嬉しそうにしている。
彼女にとって側にいられることが幸福に繋がるのだろう、抱いている気持ちを鮮明にする。
「後で」
「はい」
その言葉を残し、シオンは退室する。
そしてドアを閉めると同時に、シオンはクローリアとの間に存在する壁について考え込む。
どうすればいいか――
まだ、答えは出ない。