アメット
第七章 進むべき道
統治者主催のパーティーを境に、明らかに二人の雰囲気が変わった。
互いの雰囲気の違いは明白で、クローリアはシオンを意識してしまうのだろう、家政婦の仕事に身が入らず失敗を繰り返す。
今日は床掃除の途中で頭を壁にぶつけてしまい、ドスっという鈍い音を響かす。
「大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です」
「今、凄い音が……」
「へ、平気です」
「頭をやったのか」
シオンは自室で仕事を行っていたが、鈍い音に驚いたのだろう、部屋から飛び出しクローリアのもとへ駆け寄ると状態を確かめる。
クローリア本人は「大丈夫」と言い続けているが、見れば頭頂部にコブができている。
また、相当痛かったのだろう、眼元に涙が滲み出ていた。
「無理はしない」
「で、ですが……」
「こういう時は、頼る」
「……はい」
本当はシオンに頼りたい気持ちもないわけではないが、いかんせんシオンの見た目が破壊力抜群。
出会った当初は伊達眼鏡を使用し、身嗜みはお世辞ながらもかっこいいとはいえなかった。
しかし正体を話した今、変装することなく自宅の中では伊達眼鏡を外している。
その姿から思い出すのは、パーティー時の正装姿。
刹那、クローリアの顔が紅潮しだす。
「クローリア」
「は、はい!?」
「打ち所が、悪かった」
「い、いえ」
「意識が半分飛んでいた」
「……すみません」
「まだ、足も治り切っていないのだから、無理はしない方がいい。これ以上、怪我をしたら困る」
勿論、シオンはクローリアの身を心配して発した言葉であったが、クローリアは別の意味で捉えてしまう。
怪我をしては困ると言っているのは、家政婦がいなくなるからか。
それともクローリアの身を本当に心配しているからか。
答えがわからないからこそ、もどかしさが続く。