アメット
「今日の飯は、俺が作る」
「わ、私が作ります」
「いや、いいよ」
シオン曰く、集中力が散漫な状態で料理を作るのは危ないという。
これ以上怪我をされたら一大事なので、代わりに作る。
またこの状況で作られてもクローリアの身を心配してしまうので、任せてほしいという。
そこまで言われると断ることはできず、クローリアは頷く。
「ところで、冷蔵庫に何かあったかな」
「今ある材料で作れないことはないですが、多くの料理を作るとなりますと、買出しに行きませんと……」
「そうか」
それなら買出しに行かないといけないと、シオンは支度をしに自室へ戻る。
しかしクローリアが気になったのだろう、一度彼女のもとへ戻ると身体を抱き上げ、ソファーに座らせる。
「買い物は、俺一人で行く」
「私は……」
「テレビを観ているといい」
「お掃除は?」
「これだけ綺麗なんだ、今日はいいよ。それに毎日仕事をしているんだから、たまには休まないと」
「それでは、お給料が……」
「休憩を与えず、仕事をされると俺が何か言われてしまう。そうだ! 足が治ったら、両親に会いに行くといい」
突然の提案に、クローリアは目を丸くしてしまう。
この提案を素直に受け入れていいのか迷いが生じるのか、本当に会いに行っていいのか逆に尋ねてしまう。
オドオドとしているクローリアにシオンはフッと顔を綻ばせると、両親の顔を見るのもいい息抜きになると話す。
「嬉しいです」
「何か、持って行くといい」
「持って行って、大丈夫でしょうか」
「うん?」
「途中で、没収とか――」
確かに、クローリアの話は一理あった。
最下層はドームの中では特殊な場所で、彼等が上部に行けないように監視し閉じ込めている。
その場所に、高級品を持って行くことが許されるのかどうか――と考えるのは普通なことで、これについてシオンは即答できないでいた。