アメット

(買いにいかないと)

 シオンに告白されたことが、クローリアの心境に変化を齎したのだろう表情が明るい。

 実家から帰って来たばかりで疲れているが、シオンに美味しい料理を作らないと――と、自分自身に気合を入れる。

 クローリアはいそいそと買い物の準備を行うと、いつも利用している店へ急いだ。


◇◆◇◆◇◆


「本当か!?」

「……声が大きい」

「わ、悪い」

 大声を発したのは、アイザック。

 シオンの指摘にアイザックは片手で口を塞ぐと、今度は小声でクローリアに告白したことを褒める。

「そこまで……」

「だけど、良かっただろう?」

「……ああ」

 これについて照れを覚えるのだろう、シオンの口調はしどろもどろになっている。

 一方、友人が幸せになったことが嬉しいのだろう、アイザックの表情が綻ぶ。

 二人が結ばれた記念ということで食事に誘うが、シオンは頭を振り「クローリアがご飯を作って待っている」と、話す。

「羨ましい」

「お、おい」

「正直な感想だよ」

「だからって……」

「照れるな」

 そう言うが、何かを思うことがあったのかアイザックは肩を竦める。

 急激な感情の変化にシオンは首を傾げると、どうしてそのような反応を見せるのか尋ねる。

 しかし今の質問は地雷に等しかったのだろう、アイザックが漂わせている雰囲気が一変し、シオンを驚かす。

「……アイ」

「彼女、作るか」

 それについてシオンは「頑張れ、協力する」と言いそうになるも、これを言っては地雷になってしまうと瞬時に判断したのだろう、口をつむぐ。

 いつもなら何かを言ってくるシオンが何も言ってことないことに不信感を抱いたのか、アイザックはシオンを凝視してくる。


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