アメット

 確かに、アイザックの言い分も一理ある。

 告白したのだから、二人は恋人同士。

 そして、その先の未来を期待してしまう。

 しかし今の状況では、恋人同士であっても表立って言うことはできない。

 また、それ以上を望んではいけない。

 だが、クローリアのような大人しく控え目な人物がそうそういるわけではなく、統治者一族として上部に戻れば、苦手としている人物が集まり鬱陶しいほどアピールし、シオンとの婚姻を望む。

 それも自分を安売りしてくるのだから、シオンにとって頭痛の種となっている。

「俺は……」

「どうしたい?」

「彼女と一緒にいたい」

「なら、一度相談したらどうだ」

「誰に?」

「親父(おやじ)さん」

「何と言われるか……」

「反対されるのか?」

「いや、そんなことは……」

 グレイは他の統治者と違って、下部の人間だからといって差別を行うことはしない。

 正直に包み隠さず話せば、わかってくれるのではないか――と、淡い期待をしてしまう。

 また、クローリアを連れて行った時受け入れてくれ、彼女の立場を思いアムルの養女になることを提案してくれた。

 パーティーの時に何があったのかアイザックに話していると、いい事を思い付いたのかアイザックが声を上げる。

「どうした?」

「養女ってどうだ」

「アムルのか?」

「そう」

「どうだろう」

「だけど、それが最善の方法じゃないか。お前の話だと、その人はA階級の人間だ。釣り合いは、十分じゃないか」

「確かに……」

 いくら互いに愛し合っているとはいえ、立ちはだかるのは階級。特に統治者一族となれば、相手は同じ統治者一族の者かA階級の人間になってしまう。

 それより下――ましてや、最下層の者と一緒になるのは以ての外。

 流石のグレイも、最下層の人間との恋愛は庇いきれない。


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