アメット
「凄いな」
「毒性も強い」
「見た目でわかる」
「しかし、どうしてこんな形に……」
「外界の植物は、摩訶不思議だ」
シオンの率直な感想に、相手は何度も頷く。
本来植物は、全てこのような形をしているわけではない。
外界に蔓延している毒性を吸い込んで、このような不可思議な姿に変貌してしまった。
勿論、植物の中にも多くの毒が含まれているので、丁重に扱わないといけない。
この部屋で行っているのは、植物の調査。
毒によって、どのように進化したのか。
含まれている毒の調査と、それに対抗するワクチンを見付ける。
研究には大量の素材が必要となるので、このような場所で外界の危険極まりない植物を育てている。
それらの栽培を行っているのは、階級が低い者。
A階級の人間が手を出すことはせず、何かトラブルが発生しても彼等が対応することはない。
ただ、彼等も全ての面で悪魔というわけではなく、多少の優しさ――治療による長期入院を「有休扱い」してくれることだろう。
しかし、B階級の人間は誰も喜ばない。
「これ、お前が採取した奴だろう」
「……懐かしい」
「暗いぞ」
「わかるだろう?」
「まあ……ね」
今、シオンと話している人物も同じB階級なので、シオンが何を言いたいのか痛いほど理解できる。
外界へ赴いたり危険な調査を行ったりすることは、科学者になる時点である程度は受け入れそのようなものだと考えていたが、いかんせん仕事の量が多く苦労も付き纏う。
これが終わったら、次の仕事は――
と考えつつ、それぞれが作業を進めていく。
「あっ!」
「どうした?」
突然発せられた間の抜けた声音にシオンは手を止め反射的に振り返ると、指で指示されている方向に視線を合わす。
見れば、背の高い植物がひとつの実をつけていた。
勿論、これを食す勇気は二人にはない。
何より見た目が悪く、好みは毒々しいまでの赤色をしていた。