アメット
腹の減り具合からして結構な量を食した方がいいが、あまり食べ過ぎるとクローリアの手料理が食べられなくなってしまう。といって少量だけではこれからの仕事に差支えがあるので、いつも食べている半分の量に抑えることにした。あとは、根性で乗り切ろうとシオンは考える。
「お待たせ」
「それでいいのか?」
「まあ……ね」
「節制でもしているのか?」
「いや、そういうわけじゃない」
曖昧な言い方を繰り返すシオンに、同僚は何を隠しているのか瞬時に悟る。それと同時に口許を緩めると、家政婦が作る料理を楽しみにしているから――と、シオンの隠し事を言い当てる。
「どうして、わかった」
「顔に書いてある」
「……気付かれないと、思ったのに」
「わかり易いっていうか、なんというか……いいよな。家政婦を雇うことができて、羨ましいよ」
家政婦を雇うことは一種の憧れに近いものがあるが、B階級ということで諦めていた者も多い。その中で同じ階級のシオンが家政婦を雇ったというのだから、盛り上がらないわけがない。
上手くやっているか。
家政婦の仕事っぷりはどうか。
などなど、質問が続く。
「料理は、上手いよ」
「だから、昼食を減らすのか」
いいことを聞いたと言わんばかりに、同僚の頬が緩んでいく。こうなると、一方的に質問攻めに合う。
「ま、待ってくれ」
「いいじゃないか」
「飯、食わせてくれ」
「家政婦が作るんだろう」
「昼飯抜きは辛い」
そう言うと、シオンは物凄い速度で食べ物を胃袋の中に納めていく。しかし殆ど咀嚼しないで食べていたので、途中で喉に詰まってしまう。慌てて飲み物を飲み胃袋に落とすが、息苦しさは続く。見兼ねた同僚は椅子から腰を上げると、シオンの側に行き背中を摩りだす。